旅のお供

旅をするときのお供はいつも本だ。

どこへ行くにもかならず本は持っていく。旅へ行くとなるといつも絶対に持っていく本が2冊ほどある。おーなり由子の『きれいな色とことば』、岡尾美代子の『Land Land Land』がその本で、もう読むのは何百回目になる。読み飽きているし、実際持っていても読まないことの方が多いが、持っていく。旅のお守りみたいなものだ。

そのほかにも読みたいなと思う本や、なかなか読めていなかった本をキャリーバックに詰める。実際には持っていった本をすべて読みきれないのに持っていってしまう。本がないと旅が始まらない。

実家にも例に漏れず本を持っていった。お守りの本と、読み直したい本、まだ読めていなかった本を選ぶ。実家にも本はたくさんあるし、きっと実家の方でも本を買うのにもかかわらず。実家に帰る、ということはもう私にとっては旅なのかもしれなかった。家だけど旅先。私の家はあの狭いワンルームになっていた。

地元へ帰ると、相変わらず山が近くにあって耕されてない田んぼからは雑草が生い茂っていて、長閑ですこし年老いて見えた。地元も悪くないなと感じたのは最近で、自分の居場所がないからこそただ長閑なこの場所を心地よく思えるのかも知れなかった。

知り合いも少なくなったこの場所で私は本を開く。ここでは気を使う必要もなく素のままでいられる。静かな気持ちで本と向き合い、時折窓の外を眺める。何も変わらない景色に安心する。再び本へと視線を戻し、ただ言葉だけに意識を集中させる。

こころおきなく旅に出る。